「今日の夕方ごろに着くはずだ」
朝起きてすぐにビョンジュンはそう言った。
シアトルを経由するわけではないので
降ろすのは100マイルくらい手前になるわけだが、
それでも全然ありがたかった。
というより、
10日ぐらいで横断が終わろうとしている。
狩野英孝かよ。
なんとなく物寂しい雰囲気が漂う車内。
今日でお別れかー。
お昼休憩。
サービスエリアに到着。
「ビョンジュン、また写真撮っていい?」
「もちろん!待って、帽子取ってくるから」
ビョンジュンも自分のスマートフォンを取り出し、カメラを起動する。
息子に俺の話をするらしい。
「ジャパニーズサムライボーイ」って紹介するってさ。
なんだか馬鹿にされているような……。
さらに半日ほど走らせ、到着。
とても寂しいけど、行かなきゃ。
「俺、ビョンジュンとお別れするのとても悲しい」
「俺がヨーロッパにいた時、50歳のおじさんに助けられたんだ。
その人も誰かに助けられたことがあるらしくて、
今度はお前が誰かを助ける番だって言われた。
これで恩返しできたかな。ガハハ!」
「ユーノーワットアイミーン?」と顔を覗き込むビョンジュン。
わかってるよ、今度は俺が誰かを助ける番だな。
明日でも、10年後でも。
「気をつけて!ジャパニーズサムライスピリット、ムリムリ!」
ずっとガハガハ笑ってるビョンジュン。
トラックを降り、トラックが見えなくなるまで手を振った。
近くのモーテルで急に寂しさがこみあげる。
出会ったらいつか別れないといけない、
こんなに別れが悲しいなら出会わない方がよかったのかなー。
俗物的な上に幼稚な感情である。
でも寂しいなあ。
またどこかで会えたらいいなあ。