ニューヨークの友人宅に帰り、
あとは帰国まで数日間ダラダラするだけ。
もう書くことはないだろうな、って思ってたんですが。
最後の最後に事件が。
友人のシェアハウスの部屋を一つ借り、
旅の疲れを癒すかの如くグータラ寝ていた俺。
ノックで叩き起こされる。
まだ9時じゃん、もう少し寝させてよ……。
扉の前にいたのは上の部屋に住む大家さん。
日本語が話せる、台湾人のおばあちゃんです。
「おたく昨日どこいたノ」
「えと、洗濯して、ご飯食べて……」
「本当にそれだけなノ、嘘はよくないノ」
「(あ、タバコNGだったのかな……)
これだけだと思います、どうしたんですか?」
「私のネ、真珠がないノ」
えっ。
「おたく部屋入ったデショ。わたしわかるノ。
顔を見ればネ、嘘をついてるかどうかわかるノ」
「……えと、俺が盗んだってことですか?」
じっと顔を見上げ、唇を噛みしめながらうなずく大家さん。
ちょっと待てー!!!
なんでこんな大きな旅をしてきた後に
そんな小さなことしないといけないんだ!
「おたくネ、帰ってきたときすごく汗臭かったノ。
ヒッチハイクなんてネ、おそろしい、おそろしいノ、
あなたが誰か殺す誰かがあなた殺すドッチ!!!」
なにが?
めちゃくちゃ怒ってる……。
と、とにかく、彼女曰く、
俺は帰ってきたときからクサくて(二重の意味で)、
そんな不透明な旅をしていたヤツの言うことなんて
何一つ信じられないノ、ということらしい。
なんだそりゃあ。
「今から警察を呼ぶノ、だからおたくは夕方に帰ってくる、いいネ」
部屋を追い出される俺。
えー。なんなんだこの状況。
それから数日間も、彼女の疑いの目は晴れず。
シェアハウスの友人たちがかばってくれたけど、
こうなった大家さんはもう誰の言うことも聞かないみたい。
下手に部屋を出入りすると「おたくなにしてるノ」とか言われるし、
家にいたらいたで「部屋でなにしてるノ」とか言われるし、
残りのニューヨーク生活はとても窮屈なものになりました。
ちなみに言うまでもないけど、
パクってないですよ。
パクってどうするというんだ、質にでも流すか……?